パイデイアの豆について

〈珈琲はオーケストラ〉

自家焙煎珈琲パイデイアでは、深煎りを中心にストレート、ブレンドを数種類ずつご用意しております。

珈琲というと、とかく「酸味」と「苦味」の二つが言われがちですが、何もこの二つだけで珈琲の味が決まるわけではありません。

確かに味全体の割合で考えると、「酸味」と「苦味」が占める割合は大きいかもしれませんが、それ以外にもいろんな要素が味を決めています。

例えば、カレーの隠し味にインスタントコーヒーを入れるなんて裏技があります。

……おっと、味の話をしている例え話に味の話を、しかも珈琲の味の例え話をしているのに、隠し味にインスタントコーヒーなんていうのは、話しが下手くそですね。

じゃあ、こっちにしましょう。

オーケストラのスコア(全てのパートが書いてある楽譜)を開いてみます。誰もが口ずさんで歌えるメロディを演奏している楽器はたくさんあるオーケストラの楽器の中でもほんの3つとか4つくらいです。

それ以外の楽器は、全く違うリズムを刻んでいたり、あるいは全くリズムを刻まずにずっと全音符なんて楽器もあり、こんなにいろんな演奏が集合して音楽が奏でられているのかとびっくりします。

味についてもオーケストラと同じことが言えると思うのです。

よく耳にするメロディラインのような「酸味」や「苦味」だけが語られがちな珈琲ですが、実は和音を奏でて曲の方向性を示している低音パートのような「コク」やメロディに絡むように対旋律を歌うオーボエのような「甘み」など、珈琲もいろんな味の要素から出来ているのです。

〈パイデイアの珈琲は「甘い」のための深煎り〉

人口に膾炙している通り、珈琲の原料とは一言で言えば果実の種です。

それを乾燥させたり、発酵させたりしたものを焙煎して、粉にして、お湯で抽出したものが珈琲です。
よくもまあ、ここまでして飲もうと思ったものです。
ありがとう、先立人達よ。

元が果物ですから、果物由来の甘みがするはずです。

実際に生のコーヒー豆を焙煎してみると、青臭い匂いから次第に甘い香り漂ってきます。そこから香ばしさが追いついてくると、あっという間に焙煎機からは珈琲の香りがしてきます。

この途中の甘い香りが鼻を通る時、やっぱり珈琲は果物だよな、と思うのです。

自家焙煎珈琲パイデイアはこの「甘み」を目指します。

「酸味」や「苦味」がメインに語られる珈琲の味に隠れて、実は珈琲を珈琲たらしめていると言っても過言ではない「甘み」をとことん追求したい。

カップを口につけた時、鼻をくすぐる珈琲の香り。一口含むとまず珈琲の苦味が広がります。その後、舌の上に残る果実由来の珈琲本来の甘み、そして、最後、鼻を抜けていく香りの余韻。

こんな珈琲を焙きたいと思って、日々勉強しております。